「バックドアとは何か?どのような被害が発生するのか知りたい」という疑問がある方もいるでしょう。
バックドアとは、コンピュータのソフトウェアやハードウェア内に潜む、不正に侵入するための経路のことです。攻撃者に悪用されると深刻なセキュリティ被害を引き起こします。
情報漏えいやデータ改ざん、他組織への攻撃の踏み台にされるなど、企業の信用や経営に大きなダメージを与えるリスクがあります。
バックドアは巧妙に隠されていることが多く、発見には複数の観点からの調査や専門的な監視体制が必要です。
この記事では、バックドアの被害状況や手口、実際の被害事例、確認方法、効果的な対策について解説します。
目次
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- バックドアとは
- バックドアにより被害が出る仕組み
- バックドアが生まれた背景
- バックドア・不正アクセスの被害状況
- バックドアを設置する代表的な手口
- メールやWebサイトを経由する
- Webサイトの脆弱性を突く
- 開発段階で仕込む
- バックドアによるリスク・具体被害例
- 情報の漏えい
- データの改ざん
- 攻撃の踏み台
- 操作記録の盗難
- 通信のハッキング
- バックドアによる被害事例
- 日本の暗号資産取引所
- Linuxディストリビューション
- パソコン遠隔操作事件
- プレスリリース配信事業者
- SolarWinds事件
- バックドアの設置を確認する方法
- 実行プロセス
- データ・ファイル
- ツール・アプリ
- ネットワーク情報
- データ使用量
- バックドアの効果的な対策方法
- トラブルに対するマニュアルを作成する
- OS・ソフトウェアを最新の状態に保つ
- 社内のセキュリティ意識を高める
- エンドポイントセキュリティを導入する
- ネットワーク監視システムを導入する
- まとめ
バックドアとは

バックドアとは、コンピュータのソフトウェアやハードウェア内に潜む、不正に侵入するための経路のことです。これは、正規の手段を避けてシステムやデータへのアクセスを可能にする隠されたルートとして存在します。
多くの場合、バックドアは悪意のある攻撃者によって意図的に設置されるものですが、場合によっては開発中のミスや監視の不備から生じることもあります。
バックドアが生じると第三者が簡単にアクセスできるようになり、サイバー攻撃によるリスクが高まるため、「バックドアがある=危険な状態」ということを覚えておきましょう。サイバー攻撃については以下の記事で解説しています。
【関連記事】サイバー攻撃とは?種類や被害事例、対策方法についてわかりやすく解説
バックドアにより被害が出る仕組み
バックドアがシステム内に設置されると、通常のセキュリティチェックを回避して不正アクセスが可能となります。
この隠された経路により、攻撃者はいつでも自由に侵入できるため、悪意のあるプログラムに感染させたり、機密情報を盗み出したりすることが容易に行えます。
バックドアがあるとサイバー攻撃を受けるリスクが高まりますが、設置されているだけで被害が拡大するわけではありません。システムの脆弱性などにより、偶発的にバックドアが発生することもあるため、攻撃者に発見されなければ被害は拡大しないのです。
ただし、一度バックドアが使用されると、それを特定し除去することは困難です。長期間にわたりシステムの安全性が脅かされることになるため、できるだけ早めに対処することがポイントとなります。
バックドアが生まれた背景
バックドアはもともと、開発者やシステム管理者が保守作業を効率よく進めるための手段として誕生しました。
通常の認証プロセスを経ずにシステムへアクセスできる裏口「トラップドア」として設計され、緊急時のトラブル対応やメンテナンス作業に活用されていた経緯があります。
当初は正規の目的で運用されていたものの、この仕組みに目をつけた攻撃者が悪用するケースが徐々に増加していきました。
現在では、サイバー攻撃者が意図的にバックドアを仕掛けて不正侵入を繰り返す手口が横行しており、深刻なセキュリティ脅威として認識されています。便利さを追求した設計が裏目に出た典型的な事例といえるでしょう。
バックドア・不正アクセスの被害状況

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表した2024年の「コンピュータウイルス・不正アクセスの届出状況」によると、不正アクセスの届出件数は年間166件に達し、そのうち約8割が実被害を伴う深刻なケースでした。
届出元を業種別に見ると、製造業が最も多く全体の約17%を占めています。
情報通信業や卸売・小売業からの報告も目立ち、業種を問わず幅広い組織が標的となっている実態が浮き彫りになりました。
攻撃手口として最も多く確認されたのはファイルやデータの窃取・改ざんで、次いで不正プログラムの埋め込み、脆弱性を悪用した攻撃が続いています。
裏口の作成(バックドアの設置)については、2022年に21件、2023年に9件、2024年に8件発生しています。バックドアを含む不正アクセスへの備えは、あらゆる企業にとって喫緊の課題です。
バックドアを設置する代表的な手口

バックドアを設置する手口は多岐にわたります。ここでは、主な手口として以下の3つを紹介します。
メールやWebサイトを経由する
メールやWebサイトは、バックドアの設置に使われる一般的な手口です。メールに添付された不審なファイルを開くことで、デバイスがマルウェアに感染し、バックドアが設置されるという仕組みです。
また、Webサイトに設置したトロイの木馬をダウンロードさせる手口もあります。このような手口を「ドライブ・バイ・ダウンロード」と言い、知らない間にバックドアが設置される可能性もあるため注意が必要です。
Webサイトの脆弱性を突く
Webサイトの脆弱性を利用する攻撃も増加しています。パッチが当たっていないWebサイトなどをターゲットにし、セキュリティ性の弱い部分を狙ってバックドアを仕込みます。
▼Webサイトの脆弱性を狙ったサイバー攻撃
- SQLインジェクション
- OSコマンドインジェクション
- クロスサイトスクリプティング
- クロスサイトリクエストフォージェリ
- ゼロデイ攻撃
セキュリティソフトなどを適用していないWebサイトなどは、脆弱性が発生し、被害を受けやすいため注意が必要です。サイバー攻撃の種類については以下の記事で詳しく解説しています。
開発段階で仕込む
3つ目は、開発段階でバックドアを自ら仕込むケースです。プログラムの開発時、もしくはメンテナンス時にバックドアを設置し、ローンチに向けてテストを行う場合があります。
テスト終了後にバックドアを除去せずにローンチしてしまうケースもあり、その場合、攻撃者に発見されると被害が拡大してしまいます。
また、すでにバックドアが設置されているソフトウェアを使い、被害を受けるパターンもあるため注意しましょう。これは、オープンソースのソフトウェアなどで起こります。
バックドアによるリスク・具体被害例

バックドアが設置されたシステムでは、攻撃者による自由なアクセスを許してしまうため、さまざまな被害が発生するリスクを抱えています。以下、代表的なリスクと具体的な被害例を5つ紹介します。
情報の漏えい
バックドアを通じてシステム内部に侵入した攻撃者が、機密データや個人情報を外部へ持ち出す被害が後を絶ちません。
顧客の氏名や連絡先、クレジットカード情報などが流出すれば、企業としての信用は大きく損なわれます。取引先との契約情報や製品開発に関する機密が漏れた場合、競争優位性の喪失にも直結しかねません。
一度失った信頼を取り戻すには長い時間と多大なコストを要するため、未然防止の徹底が求められています。
データの改ざん
システム内部に保存されたデータベースやファイルが不正に書き換えられると、業務全体に深刻な支障をきたします。
財務データが改ざんされた場合は決算報告に誤りが生じ、在庫情報の書き換えは物流の混乱を招くほか、取り返しのつかない損失に繋がるリスクも否定しきれません。
厄介なのは、改ざんが巧妙に行われると発覚までに時間がかかり、被害が拡大してしまう点です。
定期的なデータ整合性チェックやログ監視の仕組みを整え、異常を早期に検知する体制作りが欠かせません。
攻撃の踏み台
バックドアによって乗っ取られたシステムが他の組織への攻撃拠点として悪用されるケースも深刻な問題です。
自社が知らぬ間にサイバー攻撃の発信元となり、被害者から加害者の立場へと転落してしまう危険性があります。踏み台にされた事実が判明すれば、取引先や顧客からの信頼は一気に失墜するでしょう。
さらに、攻撃を受けた第三者から損害賠償を請求される法的リスクも生じます。自社のセキュリティ対策が不十分だったことを問われる可能性があり、経営に与えるダメージは計り知れません。
操作記録の盗難
バックドアによりキーボード入力やマウス操作の履歴が密かに記録されることがあります。
「キーロガー」と呼ばれる不正プログラムがバックドア経由で仕込まれると、利用者の操作内容が筒抜けになり、ログイン情報が盗まれるリスクが生じます。
重要なシステムのログイン情報が盗まれた場合、正規ユーザーになりすました不正アクセスが繰り返され、被害は連鎖的に拡大していくでしょう。
社内システムだけでなく、クラウドサービスや外部の業務システムにまで侵入される恐れがあります。キーロガーの詳細については以下の記事で解説しています。
通信のハッキング
ネットワーク上を流れるデータが傍受され、取引内容や契約情報が第三者に漏れる危険性も見逃せません。
社外とのメールやファイル転送の中身が筒抜けになれば、ビジネス上の競争力を大きく損なう恐れがあります。通信傍受によって得られた情報をもとに標的型攻撃が仕掛けられるパターンも確認されています。
通信経路の暗号化徹底とネットワーク監視体制の強化が、被害を防ぐための基本的な対策です。暗号化の仕組みについて知りたい場合は以下の記事をご確認ください。
バックドアによる被害事例

バックドアによる被害事例は複数件発見されています。中でも有名な被害事例として、以下5つの内容をそれぞれ紹介します。
日本の暗号資産取引所
2023年6月26日(米国時間)、日本の暗号資産取引所がサイバー攻撃を受けたと公表されました。取引所の名称は明らかにされていませんが、「JokerSpy」と呼ばれるmacOSのバックドアがこの攻撃に使用されたと確認されています。
「JokerSpy」は、macOSを侵害するために設計されたツールです。この攻撃は、日本の主要な暗号資産サービスプロバイダーを標的にしたとされており、ビットコインやイーサリアムなどの取引に関連したものだと見られています。
Linuxディストリビューション
Linuxディストリビューション「Linux Mint」は2016年2月21日、バックドアによるハッキング被害を受けていたことを発表しました。それによると、Webサイトをハッキングされてプロジェクトの改ざん版をダウンロードされていたとのことです。
さらに20日にもデータベースが攻撃され、ユーザー情報が流出した可能性があることも判明しています。アカウントを開設しているユーザーに対しては、できるだけ早くパスワードを変更するよう呼びかけました。
パソコン遠隔操作事件
2012年、国内の複数のパソコンから掲示板へ犯罪予告の書き込みが行われました。この書き込みにより、4人の誤認逮捕が発生しています。
本当の犯人は最低でも5人にトロイの木馬を感染させ、パソコンにバックドアを設置したとのことです。その後、デバイスを遠隔操作して4人に無実の罪を着せています。
プレスリリース配信事業者
2025年5月、プレスリリース配信サービスを手がける事業者が第三者による不正アクセス被害を公表しました。
攻撃者はサーバー内部へ侵入し、バックドアを設置して継続的なアクセス経路を確保していたことが判明しています。
この攻撃により、最大で約90万件の個人情報が漏えいした可能性があると報告されました。
事業者側は不審なファイルの検知後に対策を講じたものの、攻撃者が仕掛けたプロセスを通じた攻撃が数日間にわたって続いていたことが明らかになっています。
発表前のプレスリリース情報という機密性の高いデータを扱うプラットフォームだけに、業界全体に大きな衝撃を与えた事例です。
SolarWinds事件
2020年12月、アメリカのIT管理ソフトウェア企業が提供する製品にバックドアが埋め込まれていたことが発覚し、世界中に衝撃が走りました。
攻撃者は正規のソフトウェアアップデートにマルウェアを仕込む手法を用い、18,000以上の組織のネットワークへ侵入経路を確保していました。
複数の政府機関や大手企業が被害を受け、機密情報が外国のサーバーへ転送されていたことも判明しています。
この事件はサプライチェーン攻撃の深刻さを世界に知らしめ、アメリカのサイバーセキュリティ政策が大幅に見直されるきっかけとなりました。
信頼していたソフトウェアベンダー経由で攻撃が仕掛けられた点が、多くのセキュリティ担当者に衝撃を与えた事例です。
バックドアの設置を確認する方法

バックドアは巧妙に隠されていることが多く、発見には複数の観点からの調査が必要となります。以下、確認すべき代表的な項目を5つ挙げてそれぞれの調査方法を解説します。
実行プロセス
タスクマネージャーやプロセス監視ツールを使い、起動中のプログラム一覧を定期的に確認する習慣が重要です。
見慣れない名前のプロセスや、通常は動作していない時間帯に稼働しているプログラムがあれば、攻撃者によるバックドアを疑う必要があります。
不審なプロセスを発見した場合はすぐに停止させず、まずは詳細な調査を行ってバックドアかどうかを見極めてください。
安易に削除すると証拠が消えてしまうため、専門家への相談を優先することをおすすめします。
データ・ファイル
システム内に身に覚えのないファイルが作成されていないか、定期的に点検する作業が欠かせません。特に隠しファイルや一時フォルダ、システムディレクトリには不正なプログラムが潜みやすい傾向があります。
ファイル整合性監視ツールを導入すれば、変更の検知を自動化して効率的にチェックを進められ、組織のセキュリティ環境を強化できます。
ツール・アプリ
インストール済みソフトウェアの一覧を見直し、導入した覚えのないアプリケーションが紛れ込んでいないか検証してください。
業務で使用しているパソコンだけでなく、スマートフォンも調査対象です。正規のツールに偽装したマルウェアも存在するため、提供元や導入経緯を慎重に確認する姿勢が求められます。
特にリモートアクセスツールや管理者権限で動作するソフトウェアは、攻撃者に悪用されやすいため注意が必要です。
ネットワーク情報
ファイアウォールのログやネットワーク接続状況を解析して、外部との不審な通信がないか確認しましょう。見知らぬIPアドレスへの定期的な接続があれば警戒が必要です。
また、通常業務では発生しない深夜帯の通信や、大量のデータ送信が確認された場合もバックドアの存在を疑うべきです。
ネットワーク監視ツールを活用すれば、異常なトラフィックをリアルタイムで検知する仕組みを構築できます。
データ使用量
通信量やストレージの使用状況に急激な変化がないか、定期的にモニタリングする取り組みが早期発見に繋がります。
バックドアが情報を外部へ送信している場合、アップロード通信量の異常な増加として現れることがあります。使用量の推移をグラフ化しておくと異変に気付きやすくなるためおすすめです。
バックドアの効果的な対策方法

バックドアによる被害を防ぐためには、以下5つの対策が効果的です。対策を徹底することで、企業の機密情報やシステムの防衛に繋がります。
トラブルに対するマニュアルを作成する
バックドアの検知や対処方法に関するマニュアルを作成し、社内の従業員に共有する対策方法が有効です。事前に潜在的なリスクや対処法を共有しておくことで、実際にトラブルが起きた場合に、迅速かつ適切に対応できるようになります。
▼マニュアルに記載すべき主な項目
- 不審な通信の確認方法
- システムの異常動作時の初動対応
- 専門家やセキュリティチームへの報告手順
具体的な手順やチェックリストを作成しておけば、従業員一人ひとりの対応が的確になり、社内全体のセキュリティ対策が高まります。マニュアルはできるだけ詳細に作成しましょう。
OS・ソフトウェアを最新の状態に保つ
OSやソフトウェアを最新の状態に保つことも大切です。定期的にソフトウェアのアップデートを行い、セキュリティパッチを適用させることで、新たな脆弱性の修正が完了します。
新たな脅威を予防できるとともに、既知の脆弱性に対するリスクが低減します。特に重要なシステムやデータを取り扱う企業の場合は、自動アップデートを適用させ、常に最新の状態を保つようにしましょう。
社内のセキュリティ意識を高める
社内のセキュリティ意識を高めることで、バックドアの存在に気付きやすくなり、迅速に対処できるようになります。社内のセキュリティ意識を高めるためには、セキュリティポリシーの教育が不可欠です。
全従業員を対象にしたセキュリティ基礎教育や基本知識の共有などを行い、「なぜサイバー攻撃による被害に遭うのか」「バックドアを対策するにはどうすればいいのか」といった内容を理解してもらいましょう。
エンドポイントセキュリティを導入する
端末ごとにセキュリティ対策を施すエンドポイントセキュリティの導入は、バックドア対策の基本といえます。
従来型のウイルス対策ソフトに加え、EDR(Endpoint Detection and Response)機能を備えた製品を選ぶことで、侵入後の不審な挙動も検知しやすくなります。
リアルタイムで脅威を監視し、攻撃者の活動を初期段階で遮断する仕組みが被害拡大を防ぐ鍵となるでしょう。
クラウド型のソリューションであれば、最新の脅威情報が自動で反映されるため、ゼロデイ攻撃への対応力も高まります。EDRについては以下の記事で詳しく解説しています。
ネットワーク監視システムを導入する
通信トラフィックを常時監視するシステムを構築し、異常な挙動を即座に発見できる体制を整えることが効果的な対策となります。
不正な接続や大量のデータ送信を自動で検出すれば、被害が深刻化する前に対処へと動き出せます。IDS(侵入検知システム)やIPS(侵入防止システム)を組み合わせることで、多層的な防御網を敷くことが可能です。
監視対象には社内ネットワークだけでなく、クラウド環境やリモートワーク端末も含めて漏れのない体制を目指してください。
まとめ
この記事では、バックドアの被害状況や手口、被害事例、確認方法、効果的な対策について解説しました。
バックドアが設置されると、情報漏えいやデータ改ざん、攻撃の踏み台、操作記録の盗難、通信のハッキングなど多岐にわたる被害が発生します。
被害を防ぐには、マニュアルの作成やセキュリティ意識の向上、ネットワーク監視システムの導入が有効です。
実行プロセスやネットワーク通信の定期的な点検を習慣化し、組織の情報資産を守るための対策を継続的に実施しましょう。企業が取り組むべき対策については以下の記事で解説しています。
【関連記事】企業が取り組むべきセキュリティ対策とは?重要性や対策内容を解説
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