セキュリティエンジニアとは?仕事内容や必要スキル、育成方法を解説

「セキュリティエンジニアとは何か」「未経験からでもなれるのか」という疑問がある方もいるでしょう。

セキュリティエンジニアは、その名前の通りセキュリティ対策を専門とするエンジニアです。

企画・提案から設計、実装、テスト、運用・保守まで幅広い業務を担当し、年収相場はおおむね500〜800万円と高水準となっています。

しかし、高度な専門知識とスキルが要求されるため、未経験からの転職には資格取得や基礎的なITスキルの習得が必要です。

この記事では、セキュリティエンジニアの仕事内容や年収、求められるスキル、役立つ資格、未経験からなる方法について解説します。

目次

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  1. セキュリティエンジニアとは
  2. セキュリティエンジニアの仕事内容
  3. 企画・提案
  4. 設計
  5. 実装
  6. テスト
  7. 運用・保守
  8. セキュリティエンジニアの平均年収
  9. セキュリティエンジニアに求められるスキル・知識
  10. プログラミングスキル
  11. コミュニケーションスキル
  12. セキュリティ関連の知識
  13. セキュリティエンジニアの仕事に役立つ資格
  14. 情報処理安全確保支援士
  15. 情報セキュリティマネジメント試験
  16. シスコ技術者認定
  17. CASP+
  18. 未経験からセキュリティエンジニアになる方法
  19. 資格取得を目指す
  20. ITエンジニアとして経験を積む
  21. 大学や専門学校に通う
  22. まとめ

セキュリティエンジニアとは

セキュリティエンジニアとは、組織のIT資産や情報資産を保護するためのセキュリティ対策を専門とするエンジニアのことです。

現代のデジタル社会において、サイバー攻撃の脅威は日々深刻化しており、企業システムを守るセキュリティエンジニアがますます重要になっています。

一般的なシステム開発エンジニアと異なり、セキュリティエンジニアは「攻撃者の視点」を常に意識しながら対策を組み立てます。

近年のクラウド化やIoT普及により、守るべき対象は従来のオンプレミス環境から多様なデバイスまで拡大しているため、幅広い技術知識と柔軟な思考力が必要な職種といえるでしょう。

セキュリティエンジニアの仕事内容

セキュリティエンジニアの業務は多岐にわたり、企画から運用まで組織のセキュリティを総合的に支える重要な役割を担っています。

ここでは、具体的な仕事内容を5つのステップに分けて解説します。

▼セキュリティエンジニアの仕事内容

  1. 企画・提案
  2. 設計
  3. 実装
  4. テスト
  5. 運用・保守

企画・提案

セキュリティ対策の出発点となるのが現状分析と課題の洗い出しです。

組織のIT環境に潜む脅威を徹底的に調査し、どのようなリスクが存在するかを客観的に評価することから始まります。

この際、単に脅威を発見するだけでは不十分で、ビジネスへの影響度や発生確率を考慮した優先順位付けが欠かせません。

その評価を基に、「どのようなセキュリティ対策が必要なのか」を企画・提案していきます。

設計

企画・提案が終わったら、セキュリティに配慮したシステム設計に移ります。

システム設計では、強固なセキュリティと利用者の利便性のバランスを取ることが重要です。

あまりに複雑なシステムは業務効率を阻害する一方で、簡素すぎる仕組みはセキュリティリスクを高めてしまいます。

また、セキュリティ設計においては「セキュリティ・バイ・デザイン」という概念が重要な指針となります。

これは、システム設計の初期段階からセキュリティ要件を組み込み、後付けではない根本的な安全性を確保するアプローチです。

実装

設計フェーズで策定された計画に基づき、実際のセキュリティ機器やシステムの導入・設定を行います。

ファイアウォール、IDS/IPS、WAFといった各種セキュリティ機器の特性を理解し、組織の要件に合わせた最適な設定パラメーターを決定します。

また、このフェーズではセキュリティ機器の設定だけでなく、必要に応じてプログラミングも行います。

既存システムとの連携も慎重に考慮しなければならず、新しいセキュリティ対策が業務効率を阻害しないよう配慮することが大切です。

テスト

「百聞は一見に如かず」という言葉があるように、セキュリティ対策も実際にテストしてみなければ真の有効性は分かりません。

セキュリティテストで代表的なのが、脆弱性診断とペネトレーションテストの2つです。

脆弱性診断では、自動化されたスキャンツールと手動での詳細検査を組み合わせた多角的なアプローチを採用します。

脆弱性診断を行うことで、サイバー攻撃による情報漏洩やサービス停止などのリスクを低減できます。

【関連記事】脆弱性診断(セキュリティ診断)とは|その種類ややり方・サービスの選び方

ペネトレーションテストは、実際のハッカーと同じ手法を用いてシステムへの侵入を試み、防御体制の強度を実証的に検証する方法です。

さまざまな攻撃シナリオを想定した実践的なテストを通じてシステムの弱点を発見し、具体的な改善策を提案します。

【関連記事】ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは?種類・やり方・導入の流れを徹底解説

運用・保守

セキュリティ対策は「作って終わり」ではなく、継続的な監視と改善が不可欠な分野です。

24時間365日のセキュリティ監視体制により、異常な通信やアクセスパターンを早期に発見し、被害拡大を防ぐことが重要な責務となります。

インシデントが発生した際は、迅速な初動対応で被害を最小限に抑え、根本原因の分析と再発防止策の策定まで一貫して担当します。

日常的な運用業務では、セキュリティパッチの適用やログ分析、定期的な設定見直しなども重要な作業です。

脅威は日々進化し続けるため、組織のセキュリティレベルを継続的に向上させる必要があります。

セキュリティエンジニアの平均年収

2025年5月時点の転職市場では、セキュリティエンジニアの年収は500〜800万円が相場であり、他のIT職種と比較して高い水準となっています。

この高年収の背景には、深刻化するサイバー脅威に対応できる専門人材の慢性的な不足があります。

年収の幅は企業規模や個人のスキルレベルによって大きく異なり、経験豊富な上級エンジニアでは年収1,000万円を超える求人も決して珍しくありません。

特に外資系企業や大手IT企業では、優秀なセキュリティ人材を確保するために高額な報酬を設定する傾向が強まっています。

セキュリティエンジニアに求められるスキル・知識

セキュリティエンジニアには技術的な専門知識だけでなく、ビジネス理解力やコミュニケーションスキルといった幅広いスキルが求められます。

ここでは、特に重要とされるスキル・知識について詳しく解説します。

プログラミングスキル

セキュリティツールの開発や自動化スクリプトの作成において、Python、Rubyなどのスクリプト言語の知識が頻繁に活用されます。

特にPythonは、ログ分析ツールやデータ処理スクリプト、セキュリティ監視システムの開発に広く使用されているため、習得優先度が高い言語です。

また、システムレベルでの脆弱性を理解するためには、C/C++など汎用レベルの基本的な知識も重要です。

コミュニケーションスキル

セキュリティリスクの深刻度や対策の必要性を相手の立場に応じて分かりやすく説明する能力が求められます。

特にインシデント発生時の報告では、パニックを引き起こすことなく冷静さを保ちながら、状況の緊急性と必要な対応を適切に伝える必要があります。

社内でのセキュリティ研修や啓発活動では、従業員のセキュリティ意識向上を促すプレゼンテーション能力も重要な要素です。

また、外部のセキュリティベンダーやコンサルタントとの連携においても、技術的な要件を正確に伝える能力が成功の鍵となります。

セキュリティ関連の知識

基礎知識として、ネットワーク、OS、データベース、Webアプリケーションなどの仕組みを深く理解していることが前提となります。

これらの土台の上に、暗号技術、認証技術、アクセス制御、脅威分析といった専門的なセキュリティ知識が積み重なります。

特に法的規制やガイドライン、業界標準の変化に敏感であることが重要です。新しい技術トレンドや将来的な攻撃手法の動向を先読みし、予防的な対策を講じる先見性も重要なスキルといえます。

セキュリティエンジニアの仕事に役立つ資格

資格取得は、体系的な知識習得と継続的な学習習慣の構築という観点で非常に価値があります。

以下、セキュリティエンジニアのキャリア形成に特に有効な資格について詳しく紹介します。

情報処理安全確保支援士

通称「登録セキスペ」として親しまれている、日本におけるセキュリティ専門家の最高峰となる国家資格です。

2016年にサイバーセキュリティ分野で初めて創設された国家資格で、高い権威と信頼性を誇っています。

試験の合格率は例年15〜20%程度です。相当な学習時間と体系的な準備が必要な難関資格として知られています。

試験内容は、情報セキュリティの技術・運用から開発管理、法的要求事項まで幅広くカバーしており、実務に直結する知識が問われます。

情報セキュリティマネジメント試験

セキュリティ分野における入門的な位置づけの国家資格で、基本的なセキュリティ管理の知識を体系的に問う試験です。

組織におけるセキュリティマネジメントの実践的な知識に重点が置かれています。

合格率は50〜70%と比較的高く、セキュリティ分野のキャリアを目指す方にとって比較的取り組みやすい試験です。

より上位の資格である情報処理安全確保支援士への準備段階として、基礎知識の確認と定着を図るために受験する方も多い資格といえるでしょう。

シスコ技術者認定

世界最大手のネットワーク機器メーカーであるシスコシステムズが提供する、ネットワークセキュリティに特化した認定資格です。

「CCNA Security」や「CCNP Security」など、初級から上級まで段階的にレベルアップできる構造が整っており、キャリアプランに合わせた選択が行えます。

実際の業務現場でシスコ製品が広く採用されているため、実務での評価が極めて高く、転職市場においても有利に働く資格として知られています。

シスコ技術者認定の有効期限は3年であり、更新のための継続的な学習が必要です。

CASP+

CompTIA(コンピュータ技術産業協会)が認定する上級セキュリティ資格です。幅広いセキュリティ技術を横断的にカバーしている点が特徴です。

知識面だけでなく技術面も含む統合的なアプローチにより、実際にセキュリティ対策を立案・実行できる人材であることを証明します。

少なくとも10年以上のIT実務経験が推奨される上級資格として、エキスパートレベルの専門性を客観的に示すことができます。

未経験からセキュリティエンジニアになる方法

未経験からセキュリティエンジニアになることは可能ですが、それなりの努力と戦略的なアプローチが必要です。ここでは、セキュリティエンジニアになるための方法を3つ紹介します。

資格取得を目指す

資格は未経験者にとって客観的なスキル証明として機能し、採用担当者に対する強力なアピール材料となります。

特に情報処理安全確保支援士は企業からの信頼度が高く、未経験者でも一定の評価を得やすい資格です。

独学での取得も十分に可能ですが、相当な学習時間の確保と継続的な努力が必要になることは覚悟しておくべきでしょう。

資格取得の学習プロセスを通じて基礎知識が体系的に身につくため、実務に入った際のキャッチアップも格段に早くなります。

ITエンジニアとして経験を積む

いきなりセキュリティエンジニアを目指すよりも、まずは一般的なITエンジニアとして基礎を固める方法も有効な戦略です。例えば、以下のような選択肢があります。

▼ITエンジニアの選択肢

  • システムエンジニア
  • ネットワークエンジニア
  • サーバーエンジニア
  • インフラエンジニア
  • データベースエンジニア

ITエンジニアとしての経験は、セキュリティ業務に直結する貴重な財産となります。

システムの基本的な仕組みや動作原理を深く理解していれば、効果的なセキュリティ対策を講じることが可能です。

既存のITスキルを土台として、その上にセキュリティ知識を積み重ねていくことで、即戦力として活躍できる人材へと成長していけるでしょう。

大学や専門学校に通う

時間と費用に十分な余裕がある場合は、専門的な教育機関でのカリキュラムを通じた学習が効果的です。

専用のセキュリティラボや最新の攻撃・防御ツールを使った実習により、実際の業務に近い環境での経験を積むことができます。

また、教育機関が持つ企業とのネットワークを活用した就職支援や、業界の最新動向に関する情報提供も大きなメリットとなります。

まとめ

この記事では、セキュリティエンジニアの仕事内容や年収、求められるスキル、未経験からなる方法について解説しました。

セキュリティエンジニアはサイバー攻撃から組織を守る重要な役割を担うことから、企画から運用まで幅広い業務と高い専門性が求められます。

仕事に役立つ資格としては、情報処理安全確保支援士や情報セキュリティマネジメント試験などが挙げられ、未経験からでも複数の方法でキャリア形成が期待できます。

計画的な学習とスキル習得を行い、ご自身に合った方法でキャリアアップを目指すと良いでしょう。

文責:GMOインターネットグループ株式会社