DMARCとは?仕組みやメリット・デメリット、導入ステップを完全ガイド

DMARCとは、メールの送信者認証を行う高度なセキュリティ技術のことです。

既存のSPFとDKIMという2つの認証技術を統合することで、なりすましメールを効果的に防止できるほか、メールの送受信状況の可視化にも繋がります。

しかし、実装までのハードルが高く、レポート管理の負担や正規メールの誤判定リスクなどのデメリットが存在するのも事実です。

この記事では、DMARCの仕組みやメリット・デメリット、導入の流れについて詳しく解説します。

目次

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  1. DMARCとは
  2. DMARCの仕組み
  3. SPFとは
  4. DKIMとは
  5. なりすましメールの被害が拡大傾向にある
  6. DMARCを導入するメリット
  7. なりすましメールを効果的に防止できる
  8. メールの送受信状況を可視化できる
  9. メール配信率の向上に繋がる
  10. DMARCを導入するデメリット
  11. 実装までのハードルが高い
  12. レポート管理が負担になる
  13. 正規メールの誤判定リスクがある
  14. DMARC導入の一連の流れ
  15. 利用範囲の確認
  16. SPFとDKIMの設定
  17. DMARCポリシーの策定
  18. DMARCレコードの作成
  19. レポート分析
  20. 監視・調整
  21. GMOブランドセキュリティのDMARC対策支援
  22. まとめ

DMARCとは

DMARCとは「Domain-based Message Authentication, Reporting and Conformance」の略称で、メールの送信者認証を行う高度なセキュリティ技術のことです。

既存の「SPF」と「DKIM」という2つの認証技術を統合し、なりすましメールの判定精度を向上させる仕組みです。

従来の単一認証技術では検知困難だった巧妙ななりすまし攻撃に対しても、複数の認証結果を組み合わせることで高い精度での判定を実現します。

DMARCの導入により、企業のブランド保護と受信者のセキュリティ向上を同時に実現でき、安全なメール環境の構築にも大きく寄与します。

DMARCの仕組み

DMARCは既存の認証技術であるSPFとDKIMの認証結果を統合して動作し、より確実な送信者認証を実現します。

送信ドメインのDNSレコードに設定されたポリシーに基づいて、認証に失敗したメールの具体的な処理方法を決定する仕組みです。

受信側のメールサーバーは、SPFとDKIMの両方またはいずれかの認証が成功し、かつFromヘッダーのドメインとの整合性が確認できた場合にのみ、正当なメールとして判定します。

認証に失敗した場合は、ドメイン所有者が設定したポリシーに従い、メールの受信許可、隔離、または拒否のいずれかの処理が実行されます。

SPFとは

SPFとは「Sender Policy Framework」の略称で、送信元IPアドレスの正当性を検証してドメインのなりすましを防ぐ認証技術のことです。

ドメイン所有者がDNSレコードに許可された送信サーバーのIPアドレスを事前に登録しておくことで機能します。

受信側のメールサーバーは、メール送信元のIPアドレスがDNSレコードに登録された許可済みのIPアドレスと一致するかを確認し、一致しない場合は不正なメールとして判定する仕組みです。

この仕組みにより、攻撃者が他人のドメインを使用してメールを送信しようとしても、許可されていないサーバーからの送信は即座に検知され、なりすまし攻撃を効果的に防止できます。

DKIMとは

DKIMとは「DomainKeys Identified Mail」の略称で、電子署名技術を使用してメール内容の改ざんを検知する認証システムのことです。

送信者が秘密鍵を使用してメールヘッダーと本文に電子署名を付与し、受信者は公開鍵を使用してその署名を検証します。

メール送信時にハッシュ値を計算して署名を作成するため、メール内容が途中で改ざんされた場合には署名の検証が失敗し、不正な操作を即座に検知することができる仕組みです。

SPFとは異なり、メールの転送やメーリングリスト経由でも署名が保持される特徴があります。

なりすましメールの被害が拡大傾向にある

近年、企業や個人を狙ったなりすましメール攻撃が増加傾向にあり、その手法も従来では考えられなかった高度で巧妙なものに進化しています。

従来の単純なドメイン偽装から、正規企業のブランドイメージを悪用した精巧なフィッシングメールまで攻撃の多様化が進んでいるのです。

特に金融機関や大手ECサイトを装ったなりすましメールでは、受信者が真偽を判断することが極めて困難な状況です。

従来のスパムフィルターや単一の認証技術では検知が困難な手法が次々と開発され、企業の信頼失墜と個人の財産被害が同時に発生するケースが急増しています。

また、AI技術の悪用により、個人の文体や企業の文書形式を学習した自然な文面のなりすましメールも登場しています。

このような背景から、複数の認証技術を組み合わせたDMARCのような包括的なセキュリティ対策の重要性が高まっているのです。なりすましメールの対策については以下の記事で解説しています。

【関連記事】詐欺メール(なりすましメール)に効果的な対策・対処法を徹底解説

DMARCを導入するメリット

DMARC導入により企業が得られる効果は多岐にわたり、メールセキュリティの抜本的な改善と業務効率の向上を同時に実現します。以下、具体的なメリットを紹介します。

なりすましメールを効果的に防止できる

単一技術では検知困難だった巧妙ななりすまし攻撃に対して、高い精度での判定が実現されます。

SPFとDKIMの認証結果を統合判定することで、従来技術の弱点を相互に補完し、攻撃者の回避策に対しても堅牢な防御として機能するのです。

企業ブランドを悪用した攻撃に対しては、ドメイン所有者が明確な処理方針を設定できるため、被害の未然防止が期待できます。

メールの送受信状況を可視化できる

DMARCレポート機能により、自社ドメインを使用したメール送信の詳細な統計情報と認証結果を包括的に把握できます。

正当な送信元と不正な送信元を明確に区別できるため、攻撃の傾向分析や対策の効果測定も精密に実施できるのです。

レポートには送信元IPアドレス、認証結果、処理されたメール数などの詳細情報が含まれ、セキュリティ担当者は現状を正確に把握できます。

また、定期的なレポート分析を実施することで、積極的なセキュリティ対策を講じることが可能です。

メール配信率の向上に繋がる

正当なメールとして明確に認識されるため、迷惑メールフォルダへの誤分類が減少し、ビジネスメールの配信率向上に繋がります。

特にマーケティングメールやニュースレターなどの大量配信では、DMARC認証により受信者への到達率が改善され、投資対効果の向上が期待できます。

さらに、長期的な配信品質の安定化とメール配信に関するトラブルの削減も実現されるでしょう。

DMARCを導入するデメリット

DMARC導入には多くのメリットがある一方で、技術的な複雑さや運用面での課題も存在します。ここでは、DMARCを導入する主なデメリットを3つ紹介します。

実装までのハードルが高い

DNS設定やメールサーバーの設定変更には専門的な技術知識が必要で、社内にスキルを持つ人材がいない場合は外部専門家への依頼が不可欠となります。

複数のシステムにまたがる設定調整が求められる場合が多く、作業工数が予想以上に増大する恐れがあります。

特に大規模組織では、異なる部門で管理されているメールシステムの調整が必要となり、部門間の連携や承認プロセスが複雑化するため注意が必要です。

また、既存システムとの互換性確認や、設定変更によるサービス停止リスクも考慮しなければなりません。

レポート管理が負担になる

大量のDMARCレポートを定期的に分析する必要があるため、管理者は負担が大きくなります。

レポートの解析には専門知識が必要で、異常値の判定や対応方針の決定にも高いスキルが求められます。

さらに、レポート分析の結果に基づく迅速な対応が必要な場合、長時間体制での監視が求められることもあり、人的リソースの確保が大きな課題となるでしょう。

正規メールの誤判定リスクがある

設定が不適切な場合、正当なビジネスメールが拒否されてしまい、重要な商談や顧客対応に深刻な影響を与える可能性があります。

ビジネスメールの配信遅延や完全な配信失敗により、売上機会の損失や顧客満足度の低下といった深刻な業務影響が発生する恐れがあるのです。

特に、メール転送やメーリングリストを多用している組織では、正規のメールフローが阻害される可能性が高くなります。

誤判定が発生した場合の復旧作業にも時間がかかり、その間の業務停滞は避けられません。

DMARC導入の一連の流れ

DMARC導入を成功させるためには、段階的なアプローチと綿密な計画が不可欠です。各ステップでの適切な準備と実行により、リスクを最小化しながら効果的な導入を実現できます。

▼DMARC導入の一連の流れ

  1. 利用範囲の確認
  2. SPFとDKIMの設定
  3. DMARCポリシーの策定
  4. DMARCレコードの作成
  5. レポート分析
  6. 監視・調整

利用範囲の確認

現在使用しているメール送信システムとドメインを詳細に洗い出し、全体像を正確に把握します。対象となるドメインの優先順位を決定したうえで、段階的な導入計画を策定しましょう。

業務への影響度と技術的な複雑さを考慮すると、リスクの低いドメインから開始するのが賢明です。

SPFとDKIMの設定

DMARC導入の前提となるSPFとDKIMの設定を完了させ、両方の認証技術が正常に機能していることを確認します。

各認証技術の動作を十分にテストし、問題があれば事前に解決しておきましょう。送信元のすべてのメールサーバーが適切に設定されているかの検証も欠かせません。

DMARCポリシーの策定

組織のセキュリティ要件に応じたDMARCポリシーの内容を決定します。初期段階では監視モードから開始することで、段階的に厳格化していくアプローチが可能です。

ポリシー設定には慎重な検討が必要であり、関係部門との合意形成も重要な要素となります。

DMARCレコードの作成

策定したポリシーに基づいてDMARCレコードを正確に作成することで、設定ミスによるトラブルを防止できます。

作成後は複数のツールを使用したレコードの検証が必要です。バックアップ体制も整備しておけば、問題発生時の迅速な復旧が可能になります。

レポート分析

異常なトラフィックパターンや認証失敗を早期に検知するためにも、DMARCレポートを分析しましょう。

認証失敗の原因を特定したら、必要に応じて設定を調整し、継続的な改善を進めていきます。

分析結果に基づく迅速な対応体制を構築すれば、セキュリティインシデントの予防効果を高められます。

監視・調整

継続的なモニタリングにより、DMARCの効果を定量的に測定し、投資対効果を評価します。

新たな脅威や環境変化に応じてポリシーを見直すことで、常に最適なセキュリティレベルを維持できます。

GMOブランドセキュリティのDMARC対策支援

画像引用元:GMOブランドセキュリティ

GMOブランドセキュリティ」では、なりすましメール対策に特化した専門的なサービスを提供しております。

DMARC設定サポートでは、企業ごとの状況に合わせてなりすましメールの対策設定を支援いたします。

また、企業ロゴ付きメール(BIMI)や企業ロゴ所有証明書(VMC)の導入支援により、メールの視覚的な信頼性向上も実現可能です。

未使用ドメインの悪用防止対策も含めた包括的な対策を行うことで、企業ブランドの保護とメールセキュリティの強化を同時に達成します。

組織のなりすましメール対策を考えている企業様は、「GMOブランドセキュリティ」にぜひご相談ください。

まとめ

この記事では、DMARCの仕組みやメリット・デメリット、導入の流れについて解説しました。

DMARCを活用すれば、なりすましメールの効果的な防止、メール送受信状況の可視化、メール配信率の向上といった効果を得ることができます。

実装のハードルや管理負担などの課題もありますが、段階的な導入と継続的な監視により、安全なメール環境の構築に期待できます。

GMOブランドセキュリティ」では、専門知識を持つスタッフが企業・組織のメールセキュリティ強化をサポートいたします。安全なメール環境を構築したい企業様は、ぜひご相談ください。

文責:GMOインターネットグループ株式会社